産業用途における差圧測定
30. juli 2025

差圧センサはどのように機能し、他のセンサタイプとどのように違うのでしょうか?差圧測定の原理にはどのようなものがあり、どんなメリットがあるのでしょうか?このブログでは、差圧測定の世界を詳しく見ていき、2つの代表的なアプリケーションとその課題を取り上げます。
KELLER Pressure社の圧力センサの全てが差圧を測定している、ということもできます。しかし、ゲージ圧と絶対圧センサには圧力差を測定する基準点が定義されています。絶対圧の場合、この基準点は絶対真空です。ゲージ圧は大気圧(空気圧としても知られる)に対して測定されます。
上記の圧力タイプとは対照的に、差圧センサは基準点を定義することなく、2つの圧力間の差を測定します。
これら3つの圧力計測タイプの類似点と相違点の詳細については、ブログ「圧力タイプとそれぞれの意味」で詳しく説明しています。
差圧測定セルの構造
KELLER Pressure社のピエゾ抵抗型差圧センサは、色々な構造で作ることができます。ウェット」または「ウェット-ウェット」という用語は差圧センサに独特な特徴で、それぞれの圧力ポートに使用できる圧力媒体を示しています。例えば「ウェット-ウェット」は 両ポートに液体を使用できるという意味です。
KELLER Pressure社のPD-33Xシリーズは、クラシックな「ウェット-ウェット」接続で設計されており、この構造ではトランスデューサの背面もオイルで満たされています(下図Oil fillingの箇所)。測定媒体はステンレス製金属ダイアフラムの両面(P+とP-)と接触するようにできています。

シリーズPD-33Xの構造
PRD-33Xは異なる構造をしており、基準圧ポート(P-)はセンサチップの背面と直接つながっています。そのため腐食性や研磨性のある測定媒体を基準圧ポートに使用する事はできません。

シリーズPRD-33Xの構造
「ウェット」及び「ウェット-ウェット」と呼ばれる2つデザインのメリットは、差圧の分解能が非常に高いことです。目的の圧力レンジ用に設計されたチップで測定するからです。
他に、絶対圧測定セル(PD-39X)を2つ使用して2つの圧力を測定し、電子回路によって差圧を求める方法もあります。この構造は特に高圧の場合に向いています。

シリーズPD-39Xの構造
差圧センサの代表的なアプリケーション
流量測定
温度・圧力・力に加え、流量測定は工業計測技術におけるもう一つの重要な測定変数であり、プロセスオートメーションの基礎の一つです。流量の測定にはいくつかの方法があります。一般的な方法の一つとして、オリフィス板を介した差圧測定があります。この流量測定の 原理を理解するために、基礎となる物理学について少し触れてみましょう。
ベルヌーイ方程式
スイスの数学者・物理学者ダニエル・ベルヌーイは、18世紀に兄のヨハンとともにベルヌーイ方程式を確立しました。この方程式は、非圧縮性の液体や気体(流体)の場合、ある断面を一定時間移動する媒体の質量は、パイプやラインの直径に依存しないというものです。簡単に言うと、パイプの直径が小さくなれば流速は増加し、パイプの直径が大きくなれば流速は減少するということです。流量は常に一定です。この現象は朝のシャワーでも再現できます。シャワーヘッドの設定によって、水がより突き刺さるように感じたり、心地よい夏の小雨のように感じたりします。この効果は、水量が同じであっても開いているノズルの数が異なることで生まれます。
オリフィス板を使用することで、その上流と下流の両方に圧力差が生じます。数式を使うことで、この圧力差に基づいて体積流量を計算することができます。

Q: Volume flow m3/s
α: Flow coefficient
A: Flow cross-section of the orifice plate m2
ρ: Density of the fluid in kg/m3
Δp = p1 – p2: Pressure difference in bar

オリフィス板
液化ガスタンクのレベル測定
差圧センサは液化ガスタンクのレベル測定にも使用されます。酸素、窒素、水素、二酸化 炭素、アルゴン、天然ガスに含まれるメタンなどのガスを輸送や貯蔵のために液化すると、容積が600分の1まで減ります。メタンガス1リットルの体積は、液化状態だと1.6cm3 まで減らすことができます。メタンの液体集合状態を維持するには、温度をマイナス162℃一定に保つことが求められます。それには極低温タンクを完全に断熱する必要がありますがそれは不可能なので、蒸発冷却の原理を利用します。少量の液化ガスを時折気化させ、それにより温度は一定のままです。タンクシステムは密閉されているため、タンク内の空間はガスで満たされ、従来のレベル測定は適用できません。液化メタンに作用するこの追加圧力のため、差圧センサを使って液面を求めます。
マイナス162 °Cでは圧力トランスデューサに封入されているオイルは液体状態ではいられないので、圧力を測定したいガスの温度がセンサ使用温度範囲内に収まるよう、センサは少し上の位置に設置して取り付けます。

クライオタンク
国際宇宙ステーションの特殊な例における圧力ピーク、熱および時間的影響
卓越した性能と製品品質により、KELLER Pressure社の差圧センサは国際宇宙ステーション(ISS)でも使用されています。長期にわたって正確な測定をできることを保証するために、事前に考慮が必要な重要ポイントがいくつかありました。
ウォーター・ハンマーや圧力ピークという言葉は圧力測定技術においてはよく知られている現象で、圧力サージやジュコーフスキー・サージとも呼ばれます。バルブの急激な開閉によって引き起こされるもので、完全に排除することは難しい現象です。このような圧力サージは通常、保護部品を使用することにより和らげることができます。圧力センサの破損を防ぐために、過負荷耐性に十分な余裕が残るように計算しておく必要があります。
液化ガスの凝集状態が急激に変化して気体状態に戻ると、バルブやパイプに氷が張ることがあります。このような温度変化は微小な温度ヒステリシスにつながります。前述の極低温タンクの例のように、差圧の測定を設置位置の異なる2つの絶対圧センサで行っていると、それぞれの設置位置や温度条件の違いから、経年変化のしかたまで異なってくることもあります。この差を最小限にするために、差圧センサは2つセンサ素子を可能な限り近くに配置します。両方のシリコンチップは同じ熱影響にさらされ、同じような挙動を示すようになります。
他の圧力測定技術と比較するとほぼ無視できるレベルとはいえ、ピエゾ抵抗型圧力センサでも長期的にはズレが発生します。このわずかな誤差を排除するために、定期的にシステムを減圧してゼロ点補正を行います。この作業により、KELLER Pressure社差圧センサを長期にわたって高精度でお使いいただけます。
Find out how our differential pressure sensors can also be used in our application reports.