水中での高精度制御 ― 複数ロボットによる同時計測と同時航行
06. January 2026

単独で動作するのではなく、複数の自律型水中ロボットが連携し、群(swarm/スウォーム)として計測と航行を行う。これこそが、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)機械・プロセス工学科における重点プロジェクト「SWARM」の目標でした。本プロジェクトは、Academic Space Initiative Switzerland(ARIS)との協力により実現しました。
ARISは、宇宙やその他の過酷で複雑な環境向け技術を学生自らが開発する学生団体です。従来の技術では限界に達するような環境で機能するシステムの開発を使命としています。SWARMでは、この要求を水中環境へと展開し、スイスの湖沼で研究ミッションを遂行できる、堅牢で知能化された水中ロボットシステムの開発に取り組みました。
環境と研究への貢献
スイス連邦水科学技術研究所(Eawag)との共同により、あるミッションが決められました ─ 複数の自律型水中ロボットが同時に湖へ潜行し、水深5〜30mの範囲で測定データを取得する。目的は、水質を三次元的に可視化することです。これにより、薬剤耐性菌の拡散状況などについて、より深い理解が得られると期待されています。
スウォーム(群)による最大の利点は、同時性にあります。個別の地点で順番に測定するのではなく、密度の高い同期測定エリアを形成することで、異常の検出、ホットスポットの特定、汚染源の絞り込みが可能になります。
そのためには、各ロボットが常に水深がどの程度なのかを正確に把握している必要があります。
なぜ「水深」なのか
水中ではGPSは使用できません。水中ロボットは地上のように位置情報を確認することができないため、圧力が最も重要な位置・姿勢判断の指標となります。
SWARMプロジェクトでは、KELLER Pressure製のPAA-9LX(4 bar)圧力トランスミッタが採用されました。これらのセンサはロボットの防水ハウジング内に搭載され、周囲の水圧を測定します。水深は、この圧力データからリアルタイムで算出されます。
簡単に言えば、ロボットは「自分の上にどれだけの水があるか」を圧力によって感じ取り、たとえば水深12.2mなのか13.0mなのかを高精度に把握できるのです。
この水深情報は自律制御システムに直接入力されます。各ロボットは目標水深と現在の水深を常に比較し、推進装置を使って位置を補正します。これにより、複数のロボットが同じ水深層を維持しながら同時にデータを取得でき、秩序だったスウォーム動作(群動作)が実現します。
安定かつ高精度な圧力測定がなければ、このような協調型ミッションは成立しません。
KELLER Pressureとのコラボ
KELLER Pressureは、単なるハードウェア提供にとどまらず、真の技術パートナーとしてSWARMを支援しました。圧力センサの組み込み、信号の安定した伝送、プールおよび実際の湖でのデータ評価まで、実環境を想定した開発が共同で行われました。
その成果はすばらしいものでした:
- ロボットは手動操作なしで制御された潜行と水深維持が可能
- 複数のロボットが同一水深層で同時に動作できるほど安定した水深測定
- 学生プロジェクトに不可欠な、迅速かつ実践的な協力体制
- 部品提供だけでなく、知識と経験を共有する産業パートナーシップの実現。毎年、学生チームで高度な技術プロジェクトを実施するARISにとって、このようなパートナーシップは極めて重要なのです。
SWARMからPOLARISへ
学生による開発プロジェクトは1年単位で進められます。SWARM 24/25プロジェクトは完了しましたが、そのアイデアは次のプロジェクトへと引き継がれています。現在ARISでは、後継プロジェクト「POLARIS」が進行中です。POLARISでは、サンモリッツなどの高山湖で、氷下環境における自律型システムの開発に取り組んでいます。
目標は、氷層の厚さを高分解能で、完全自律かつ人が危険なエリアに立ち入ることなく測定することです。
ここでも圧力センサによる水深情報が中核的な役割を果たします。視界が限られ、アクセスが困難な極限環境での航行に不可欠であるだけでなく、水中ロボットの絶対水深と氷下面までの距離との差分から氷厚を算出する基礎データを提供してくれるためです。

湖から氷下へ ― 学生たちは極限環境向け技術を開発し続けています。



